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ラスティー日記 20

○月×日
「なんだよなんだよ……もーう、朝からうるさいったらありゃしない」
旅が始まってから、二人とも早起きなのは分かってるさ、
でも今日はなんだか変なんだ。
撮影に出かけて行く訳でもないのに、あっちへ行ったりこっちへ行ったりドタバタ、ドタバタ…
「ほんとにもーう、うるっさい!」
僕はベッドの中に頭を潜り込ませ、静かになるのをじっと待っていた。
でもダメさ、
普段あんまり掃除なんてしやしないボサボサまでが一緒になって窓拭きなんて始めるんだから、
もうほんと雨でも降るんじゃないだろか?
僕は寝るのを諦めて、しばらく二人の様子を見ることにした。
窓拭き、床拭き、トイレの掃除と…隅から隅までピカピカになっていく。
「もうそろそろ終わりかな?」
・・・なんて思ったら、今度はボサボサがトレーラーをキャンプ場の隅に移動して、
タンクの掃除まで始めたんだ。
「こりゃ絶対何かある!」
僕はますます不思議に思って、車の上から覗いて見たり、
ボサボサの周りをグルグル回ってみたりした。
ふいに後ろからキャンキャンの手が伸びてきて、僕をヒョイと持ち上げた。
「さあさあ…ラスティー、最後のお掃除してるところだから、
邪魔しないように向こうに行ってましょうね…」

キャンキャンはそう言うと、僕をヒモに繋いで歩き始めた
「最後の掃除?」
…どう言う意味だろう?
よく意味の分からないまま、とにかく僕も歩き始めた。
僕とキャンキャンは、しばらく二人きりでキャンプ場の中をデートしたんだ
木の上からはリスが羨ましそうにチチチチチって叫んでいた
森の中を風が吹き抜けて、木の葉をカサカサ、カサカサ揺らしていた
何もかも一緒のはずなのに、でも何かが違うんだ
「何だろう?」
僕は鼻を真っ直ぐ上に向けて、少しヒクヒクと動かしてみた
何だか《風の匂いが変わった》ような気がした
僕はもう一度ゆっくりと辺りを見渡した。
あれほど続いたデコボコ道も、今はもうすっかり綺麗なアスファルトの道に変わっていた。
誰もいなかった淋しい山のキャンプ場と違い、ここには他にも人がいる。
「そうか!…もうすぐ街なんだ、もうすぐ旅は終わりなんだ」
僕はなんとなく嬉しく、なんとなく悲しくなった。
キャンキャンの言っていた「最後の掃除」の意味もやっと理解出来た。
僕達はグルリとキャンプ場を1周してから、トレーラーに戻って来た。
トレーラーの前では、ボサボサが腕組みをし
ニヤニヤしながら僕を待っていた。

「さあ―トレーラーはピカピカになったし、あとはラスティーだけだな」
「へっ?……何の事さ…」
僕は急いでボサボサとキャンキャンの顔を見た。
二人はチラッと目を合わせた後、もう一度僕を見てニャと笑った。
「ギャ〜〜放せ〜〜」
ボサボサの奴が、いきなり僕を押さえつけて頭から水をかけたんだ!
「ギャ〜やめろ〜人殺し…違った、猫殺し〜」
僕は大暴れしながら叫んでやった。
だけど、結局はビショビショにされて、
タオルでゴシゴシ、ブラシでゴシゴシ…
おまけに鼻の中まで掃除するんだから、ほんとにもうーやってらんないよ!

僕は隙を見てボサボサの手から逃げ出した。
そして一番暖かい車のボンネットの上で日光浴を始めたんだ。
お日さまがポカポカしててとっても気持ちいい!
…でもそれだけじゃなかった
山の中で僕達をずっといじめ続けた、冷たい冷たい風とは全然違う、
暖かな風がここには吹いていた。
まだ少し濡れたままの体に、暖かい風がとっても心地良かったんだ。
僕はまた鼻を上に向けてヒクヒクと動かしてみた…
「そうだ、やっぱりもう直ぐ街なんだ…」
しばらくして、僕達を乗せた車が走り出した。
窓から見える景色がどんどん変わっていく、
通り過ぎる車がどんどん増えていく、
そしてなぜか僕の気持ちもどんどん膨らんで行くような気がした。
じーっと窓の外を眺めていると、ボサボサが僕にこう聞いた。
「どうしたラスティー…街に戻るのが嬉しいのか?」
・・・でも僕は直ぐに返事をしなかった
…いや出来なかったんだ
嬉しいような、淋しいような…いろんな思いが僕の頭の中をかけ巡り
…いつのまにか、また僕は眠っていた

旅に出かける時よりも随分大きくなった僕は
旅に出かける時よりも随分汚くなったスニーカーを枕に
また旅に出かけて行く夢を見ていた
夢の中で僕は、高い高い山の頂上から、広い広い大空に向かって、
大きな大きな声で「ミャ〜〜〜〜ォ」って鳴いたんだ。