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ラスティー日記 15

○月×日
「だめだ、だめだ、だめだ…そんな道行けるもんか!」
そう大声で怒鳴ったのは僕だった
昨夜の家族会議の時さ……
これからの撮影予定とか、日程なんかをいろいろ話てたんだ
まあ、僕にとっちゃそんなこと別にどうでも良かったんだ
僕はただ美味しい物を食べて、のんびりドライブさえ出来れば、
日にちなんて何日かかろうと関係無いからさ。
…でもね、
僕が気に入らないのはコースだよコース!
どの道を走るかってことは、僕としてもちょっと黙っちゃいられない
・・・なぜって?
毎日毎日やたらとデコボコ道が多いんだよ!
そんなとこばっかり走られたんじゃ、ゆっくり昼寝も出来やしない。
だから僕は言ってやったのさ
「違う違う!そっちじゃない、
こっちだよこっち…ちゃんとした道じゃなきゃ、すねちゃうよ」ってね
僕はキャンキャンの膝の上に登り、地図を指差して言ってるのにさ、
ボサボサの奴がわざわざ虫眼鏡でないと見えないような小さな道を見つけ出して来て
「よっし…これだ!この道に決めた」なんて言い出すんだから。
「ふーっ…一体何考えてんだか…僕はもう何が起きても知らないからね」
決局今日は朝からガタコン、ガタコンとボサボサのコースを走ることになったんだ。
…でもね、
僕の嫌な予感は直ぐに当たってしまったんだ。

ガタガタガタガターン…
僕達の乗った車は、物凄い音と、なんとも言え無い焦げ臭い匂いを充満させて、
ようやく止まった。
これでこの旅が始まってから、3回目のパンクだ。
しかも今回は走ってる間にタイヤが粉々に破裂して、
もーっ・・・ほんと危ないったらありゃしない
ボサボサの奴はごく当然っていう顔でタイヤを付け替えてるけど、
僕はこのガタガタ道は大嫌いないんだ。
だって、そうだろ…そりゃ二人はいいさ、
ちゃんとシートに座ってさ、シートベルトまで締めてんだもの、
でも僕は大変さ!
車が右に左に揺れる度にダッシュボードの上を
ヒュー…ヒュー…って横滑りして、その度に頭をごっつんこするんだ。
それに、石ころや穴ぼこを越える度に、
今度は車がガタガタドンドーンってジャンプして、お尻が痛いったらありゃしない!
ガタガタ道が始まってから、もう今日で1週間が経っている。
僕はボサボサがタイヤ交換をしている間
「もうそろそろ道が良くなるのかな?」なんて考えていた。
でも、そんな僕の耳にボサボサのこんな言葉が響いて来たんだ。
「ここから先はどんどん道が悪くなるからな、ちゃんとシートベルトしなきゃダメだぞ」
僕は思わず言葉を失った……

…でも落ち込んでなんていられない、
僕は急いでキャンキャンの膝の上に駆け上がり、
シートベルトとキャンキャンの体の間に潜り込んで、自分の体を固定した。
「もーどうにでもなれってんだ……来るなら来い!」
しばらくして、新しいタイヤに着け変わった車は、静かに静かに走り…
…出すはずが無かった
タイヤが動き出すと同時に、いきなりガタコン、ガタコン、ガタコン
とんでもない音を響かせ、砂煙をあげて進んで行く。
物凄い振動が伝わって来て、積み上げてある荷物が幾つも崩れ落ちて来る。
僕は更に深くキャンキャンとシートベルトの間に体を沈ませた。
「う〜…気持悪いな〜…」
それでも僕は、大きく揺れ続けるキャンキャンの膝の上で、いつの間にかまた眠りに落ちていた。

「はぁー…はっくしょん」
吹き込んで来た冷たい風に誘われ、僕は大きくクシャミをして目が覚めた。
「…ん?…どこだ、ここは?」
ドアが開いていた。
ボサボサが車の周りをゆっくりと歩いているので、
僕は飛び出して行って足元で「ニャ〜」と鳴いた。
ボサボサが僕を静かに抱き上げると、もう一度車とトレーラーの周りをゆっくりと歩きながら、
何かを確認しているように呟いた。
「ふーっ…こりゃ想像していた以上に凄いな」
ボサボサの視線の先には、泥だらけの車とトレーラーが止まっていた。
トレーラーの前面はデコボコに変形し、よく見ると車のボディもキズだらけ、
おまけにフロントガラスにヒビが入ってる。
僕は驚いてボサボサの顔を見た。
ボサボサも僕を見て「仕方ないよな」って少し元気の無い声で言った。
目の前には、まだまだどこまでも果てしなくデコボコの道が続いていた。
「よーっし!」
僕は思ったんだ、やっぱり僕が見ててあげなきゃってさ

僕は車の一番前の、見晴らしの良い場所に陣取り、ボサボサの運転を手伝った。
驚いたー!
一体何なのさこの道は
この道には僕よりも大きな岩がゴロゴロ転がっていて、
僕よりも大きな穴がボコボコあいていて、
僕よりも大きなひびがピキピキと割れてるんだ。
ボサボサがそれを避ける為、ハンドルを右に左に切る度に、
僕の体も一緒に右に左に大きく揺れた。
僕は必死だった
ダッシュボードにしがみ付き、フロントガラスを睨み付け、
危なくないかジッーと前方を見てたんだ
でも、次から次に石ころやいろんな虫がガンガン飛んで来て、
何だか知らない間に、僕は目が回っちゃったんだ
僕は一生懸命頑張った、必死になって頑張ったんだ
…でも、もうダメだ
頭がフラフラして、とても起きてなんていられない
僕は生まれて初めて車酔いにかかり、気分が悪くて涙が出て来た…

少しして車が止まると、ボサボサがやって来て
「ありがとう……悪かったな」って頭を軽く撫でてくれた。
僕はほんの少しだけ気分が良くなったような気がして「ミャ〜〜ォ」と鳴いた。