ラスティー日記 14









○月×日


 「晴れた〜〜とってもいい天気だ!」


 ポカポカした優しい日差しの下、僕は窓辺の特等席に座り毛づくろいを始めた。 


 キャンキャンは鼻歌なんか歌いながら、上機嫌で洗濯物を干し、
ボサボサは忙しそうにカメラを抱えて出て行った。

 久々に太陽が顔を出すと、みんなの顔もニコニコだ
やっぱり晴れは気持ちがいいや!



 お昼になってボサボサが撮影から帰って来た。
何だか今日はとっても興奮してるみたいだ。
 
「いや〜凄いよ、どこまでもどこまでも山並みが続いていて、
緑が眩しいくらいに綺麗で、空が凄く広いんだ……」

 昼食の間、ボサボサは一人で喋り続けていた。
 
「山が続いてて、空が広いなんて当たり前じゃないか…」
 僕は少し不思議そうな顔をして、
窓の外の景色と、ボサボサの顔を交互に見ながら、黙ってその話を聞いていた。
 
……と、不意にボサボサと目が合ったんだ

 「ん?…何だラスティー、お前も一緒に行きたいか?」

 突然そう言われて
僕は思わず「ミャ〜〜」と返事をしてしまった。
 




 ひんやりとした風が吹き抜けて行く森の中を、
僕はボサボサの肩に乗って進んで行った。


 ボサボサの肩は、お世辞にも乗り心地が良いとは言えないが、
薄暗い森の中は、おっかなくってとても歩く気にはなれなかった。

 「キーキーキー…」
 何かの叫ぶ声が響いて来る

 「来るんじゃなかったな〜ボサボサの奴、騙しやがったな…」
 そう思い始めた時だった
突然辺りが明るくなって、僕達は見晴らしのいい山の上に立っていた。
 




 「凄かった……」

 目の前に広がる景色は確かに凄かった。
ボサボサがいつも話してくれる「凄い景色」って言うのはこれなんだって
いつのまにか僕も少し興奮していた。

 
 山も谷も空も雲も滝も川も……
みんな、みんな車の中から見てた景色とは全然違うんだ。


 僕は嬉しくなってボサボサの足元をグルグルと走ってみたり、
肩に上って一緒にカメラのファインダーを覗いて見たりした

…で、僕は思ったんだ…

 「ボサボサの奴、あんまりセンスは良くないな!」ってね。
 
僕だったらもうちょっと上から撮るけどね

だからうちは貧乏なんだ……なんていろんなことを考えたけど
この大きな青い空を見ていたら、
僕はボサボサがカメラマンをしていることに、
初めて、ほんのちょっとだけ得をした気分になった。



 半日山で過ごした後、トレーラーに戻った僕は、
夕飯までの間しばらくボサボサと遊んでやる(?)つもりだった。
 
・・・でも、
ボサボサは勝手に一人で何かを始めちゃったんだ。

テーブル一杯にいろんな物を広げてさ、僕が散らかしたら直ぐに怒るくせに
…ほんとにもー勝手なんだから…
 
僕の目線に気が付いたのか、ボサボサは急に話し始めた…
 
「いいか、カメラマンっていうのはな、撮影してからが大変なんだ、
フィルムの整理をして、機材の手入れをして、
データやキャプションも書かないといけないし・・・
お前と遊べるのはその後だ、なっ…もうちょっと待っててくれよ」
 
ふ〜ん、そんなものかね
まあ、そこまで言われちゃ仕方が無い、僕はボサボサの仕事を手伝うことにした

 撮影に連れて行ってくれたから、今日は少し良い子でいようと思ったし、
それに少しでも早く終われば、少しでも早く遊べるってもんだからね。
 








僕は勢い良くカバンを引っくり返して、フィルムを出してあげた
ボサボサはそれを一つづつ拾い集めてまた並べてた。
 
カメラの汚れもちゃんと舐めてあげた
これまたボサボサはその後から拭き直してたけどね

…とにかく、僕は一生懸命手伝ったんだ!

 それなのに「やった〜終わったぞー」って思ったら、
ボサボサの奴、急に寝ちゃったんだ。
 
「起きろ―まだ遊んでないぞ!約束が違うぞー…」
 
僕はボサボサの胸の上に乗り、大声で叫んでやった。
 
僕はボサボサがカメラマンをしていることに、
やっぱりほんのちょっとだけ損をした気分になった。


 


 イビキの響くボサボサの耳元に、
僕はもう一度大きな声で「ニャ〜〜ゴ」と鳴いた。