ラスティー日記 12









○月×日



 ザー…ズザザー…ザー……
 
 凄い雨だった



 とてもシトシト降るなんてもんじゃないんだ。
ワイパーがカタカタ、カタカタ忙しそうに動いてるけど、
もうほとんど前なんて見えやしない。

僕は車の一番前に座って、前から何か来ないか一生懸命に睨み付けていた
僕がちゃんと手伝ってあげなきゃ、
ボサボサ一人になんて任せてたら、危なくってさ……


 1時間、2時間、3時間…走っても走っても雨は弱まらない

 風がビュービュー吹いて、物凄い勢いで屋根を叩く雨の音だけが、
車の中一杯に激しく響いていた。


 ボサボサはジーッと薄暗い空を見上げて、それから静かにこう言ったんだ…
 
「これ以上走るのは危険だな……今日の移動はここまでだ」ってね


 ボサボサは少し残念そうな表情を浮かべていた
…でも僕とキャンキャンは思わず目が合って
ニャッとした
 

 「移動も出来ない、撮影も出来ない…ってことは、僕と遊んでくれるってことだもん!」


 僕は一人でそう決め込んで、何をして遊ぶかを考え始めた。

 キャンキャンは溜まっていた雑用をしてしまうんだと張り切り出した。



 しばらくして車が止まった。
ボサボサはまだ諦めきれないのか
「まだこんな時間なのになあ…」なんてブツブツ言っている。

でも、僕はそんなこと全くお構い無しにキャンキャンの肩にさっさと上り、
先にトレーラーへと移って行った。

 
 「さ〜〜今日は思いっきり遊ぶぞ!」

 僕は狭いトレーラーの中をまず3周ほど回って見せた。
これくらい張り切っておけばきっと二人とも僕のことを見ててくれるに違いない
そう思ったんだ

…でもね、ひどいんだ

全然こっちを見て無いんだよ……二人共だよ
ちょっと待ってよ、話が違うじゃないか。


 僕は怒ってキャンキャンの所へ走って行った。


 


びっ、びっくりしたー

キャンキャンの回りには、いろんな色や形の紙切れが、沢山ばらまいてあったんだ。
 
「なんだ、こんな所で一人で遊んでたんだ…ずるいやーそんなの!」

 僕は大急ぎでその遊びに参加した

 遠慮なんかするもんか、
僕はその中から一番大きな紙を見つけてガブガブガブッて齧り始めたんだ。

 「ラスティー!」

 僕を呼ぶ声が、狭いトレーラーの壁に跳ね返って響いた。
 ビクッ…としたさ
その声はどう聞いたって遊んでる声じゃ無かったんだもん。
 
僕は恐る恐るそーっとキャンキャンの方を見た
うっ…目が恐い…
 「大事な資料の整理してるんだから、破いちゃダメよ!」
 キャンキャンはそう言うと、また紙切れをバラバラと広げ始めた。
 
「ふんっ、どうせ散らかすんだったら僕がやったほうがずーっと早いのに
…キャンキャンのケチ!」

 仕方なく僕はボサボサの所に行くことにした





 ボサボサもテーブルの上になんだかいろんな物を並べていた。
僕は直ぐにひらめいたんだ…
 
「よしっ、これで遊ぼう」ってね

 テーブルの上に飛び乗った僕は、転がってるペンを齧ったり、
地図を端から破ったりして遊び始めた。

 「おいおいおい…ラスティー無茶するなよなー
あーあぁーこんなに地図を破いて……
予定表も組み直さないといけないし、邪魔するんじゃないぞ」
 破れた地図を見ながらボサボサが呆れたように言った。
 
それを聞いた僕は少しムッとした
ムッとして、カッときて…何だか悲しくなって来た

 いつもいつも僕は一人で留守番してるんだ、
トレーラーにいる時くらい遊んでくれたっていいじゃないか、
それなのに…それなのに、僕のこと怒って……
いいさ、もういいさ、こうなりゃ僕にだって考えがある。

おとなしくばっかりしてられるもんか!

 「反撃開始だ!」





 僕は勢いよくテーブルを飛び降り、
ボサボサの履いていたスリッパを叩き落してやった。
そしてそのまま一気にボサボサの足に噛みついてやったんだ。
 目一杯大きく口を開いて、思いっきりさ…

 「ギャ〜〜」

 へんてこりんな声が響いて来た。

 「ふんっ、ざま〜みろってんだ、僕を怒らせると怖いんだからな」

 ボサボサがテーブルの下を覗き込んだ。 
 もしボボサボサがもう一度怒ったら・・・
僕だってもう一度噛みついてやるんだ!そう思って身構えた。
 
ボサボサの大きな手が、にゅーっと伸びて来て、
僕が攻撃の態勢に入ろうとした、その時だった…

 「悪かったな…ちょっと遊ぶか…」
 ボサボサが言ったんだ。


 狭いトレーラーの中で僕達は思いきり遊んだんだ。
跳んで走って転げ回ってさ…
僕はすっかりくたびれちゃって、自分のベッドに入った。
 




最初から遊んでくれてたら、噛みついたりなんかしないのに…
僕は少しだけ反省して、ベッドの中から小さな声で「ニャ〜」と謝った。