ラスティー日記 10







○月×日



 旅が始まってからボサボサはいつも早起きだ。

まだ薄暗い間にカメラ抱えてどこかに出て行っちゃう

その間、僕はいつも留守番さ……

 「つまんないや〜!」



 今日もまた、朝からボサボサはどこかに出かけて行った。
僕はトレーラーのドアの所に座り、ボサボサの帰りを待ちながら、
何か面白い物がないか探してたんだ

 周りに転がっているクツを時々齧ってみたりしたけどさ、
ちょっとすっぱいだけでちっとも美味しくも無い。
 
「あ〜あぁ〜〜早く帰って来ないかな……」

 僕は待ちくたびれて、クツを枕にいつの間にか眠っていた。






 ガタガタッ……


 物音で僕は目が覚めた。
 
「ボサボサだ!」

 ドアが開くと同時に、僕はボサボサの足からよじ登り、
腕の中でしっかりと甘えてみせた。

 「おーっ…どうしたんだ、淋しかったのか?…どこかに行きたいのか?」

 僕は大きくうなずいて「ニャ〜」と鳴いた

 ボサボサはニコッと笑うと、僕を肩の上に乗せ、キャンプ場の中へと歩き始めたんだ。
 

「う〜〜ん、やっぱり外はいいな〜」
 
 僕は嬉しくなって益々甘えてみせた。 

 
 キャンプ場の中をグルッと一周回ってから、
僕達はやっとトレーラーの所まで戻って来た。

 「あ〜楽しかった」

 僕はボサボサの肩に乗ったままトレーラーに入ろうとした
…でも、そこでボサボサの足がピタッと止まったんだ。

 もうトレーラーの中に体の半分が入りかけていたのに、
もう一度逆戻りしてこんなことを言い出した。  
 
「…そう言えばラスティーはキャンプファイヤーを知らないんだな」
 
 僕にはもちろん何のことだか分かりゃしない

 「よっし…今日はキヤンプファイヤーにするか…どうだ?ラスティー」
 
「……ニャ〜?…」
 僕は思わず返事をしてしまっていた。
 





 ボサボサは僕をテーブルの上に置いてから、
急いでまた一人でどこかに行ってしまった。



 木の上から、大きくて真っ黒なカラスが僕のことを
「おぉ〜いチビ助…」
なんてからかうけど、ちっとも怖くなんて無いさ!
「今に大きくなってとっ捕まえてやるんだ!」
僕はカラスに向かって、目一杯恐そうな声で、「ニャ〜〜ゴ」って鳴いてやった。
 
 「おいおい…何怒ってるんだ」
 ボサボサがいつの間にか帰っていた。
しかも両手一杯に木を抱えてさ

…僕は思ったんだ…

 「きっとこれを投げ付けてカラスの奴に仕返ししてくれるんだ」
 ……でも……
いじめられたのはカラスじゃなくて僕だった。



 しばらくして、辺りが暗くなると、
ボサボサはその木を小さく割って火をつけ始めたんだ。
 

びっくりしたー

そりゃ、びっくりしたさ
ゴーゴー言ってて、近づいたらとっても熱いんだもん、
死んじゃうかと思ったよ。
 
それなのにボサボサの奴
「もっと近くに来ないと暖かくないぞ」なんて言うんだよ、
まったく何考えてんだか分かったもんじゃない。


 僕はこっそりとその場から逃げ出そうとした
…でも、今度は後ろから来たキャンキャンに捕まったんだ。






 
「あら、ラスティーどこ行くの?みんなで暖まりましょ…」

 冗談じゃ無い、
僕はあんな熱くてゴーゴー言う奴なんかと友達になりたかないよ!


 僕が叫んでるのにキャンキャンの奴、
そんなこと全くお構い無しにどんどん火の側に近づいて行くんだ。
 僕は少しでも遠くに逃げようと、必死にキャンキャンの肩によじ登った。

 「ははは…なんだラスティー、今度は火が怖いのか?
本当にお前は情けない奴だな」
 ボサボサの言葉に僕は少しムッとした

 「くっそー…みんなで僕をバカにして
よーし分かったよ、それなら近づいてやるさ、直ぐ近くまで行ってやるさ
よーく見てろよ!」
 
僕はキャンキャンの肩から降りて火に近付いた。
 怖いのを我慢して膝の上に乗ってさ、
じーっと睨みつけてやったんだ
だって、よそ見してる間に尻尾がこげたら大変だからね。

  
 キャンキャンが僕をしっかりと抱きかかえたまま聞いた…
 「どう、ラスティー…何にも怖く無いでしょ?」
 でも僕は返事をしなかった

 「キャンプファイヤーをすると、とっても暖かいでしょ?」
 キャンキャンがまた聞いた






 僕にはそれがキャンプファイヤーの暖かさなのか、
キャンキャンの腕の温もりなのかも分からないまま、
ただ火を見つめて「ミャ〜〜」と鳴いた。