ラスティー日記 9







○月×日


 薄暗いトレーラーの中に僕の目だけがキラッと光った。
 
「よしっ行くぞ…」

僕は、静かに静かに歩き出した。



 昨日から僕達の新しい家になったトレーラーの中に、
変な音が響くようになったのは、夜遅くになってからのことだった。


 ピタッ…ポタッ…


 僕は直ぐに目を覚まして、辺りを見渡した。
でも、もちろん誰もいやしない。

 ボサボサもキャンキャンももうとっくに寝ちゃってる。

 僕は怖くなって、ベッドの中で丸まりながらこっそり様子を覗った。
 
ピタッ…ポタッ…

 不思議な音がまた響いて来た
…でも、どうやらお化けじゃ無いし、誰かが隠れてるわけでもないみたいなんだ。


 僕はボサボサを起こそうと思って、耳をペロッと舐めたり、
鼻の頭をカプッて噛んでやったけど、全然起きちゃくれないんだ。
 
 「ふ〜っ、もういいさ、それなら僕一人で探してやる!あの音の正体を!」


 僕はベッドを飛び出し、一旦テーブルの陰に隠れて、
こっそり辺りを見渡してみた

…でもやっぱり、だ〜れもいやしない

 トレーラーの中は相変わらずシ〜ンと静まり返ったままだった。

 「もしかしてお化けかな?」

 僕はまた少し怖くなって来た

…でも、やめるもんか

絶対に正体を見つけてやるんだ!

それで明日になったらボサボサにうーんと誉めてもらうんだ
そしたら食事の量を倍にしてくれるかもしれない!

…もしかしたらスーパーの安いキャットフードから
ブランド物のキャットフードに替えてくれるかもしれない!






 僕はまず最初に、近くに有った洗濯物のカゴの中に飛び込んでみた。

 とりあえず一番底の方まで潜り込み、何枚か怪しそうな奴を選んで、
引っ張り出してみたんだ
…でも、ちょっと臭いこと以外、別に変わった様子は無さそうだ。

 「フ〜ム…ここじゃないのか」
 …僕はまた歩き出した。
 
 次に僕は押入れの前にやって来た。
 狭い隙間に片手を滑り込ませ、やっとの思いでドアをこじ開けて、中に入ってみたけど
やっぱりここにもだ〜れもいやしない

 僕は吊るしてあった服の中に潜り込んで手当たり次第に噛んでみた。
 「誰か隠れてるんだったら出て来い!」
 
…でも、本当に出て来ちゃ困るんだけどね…

 僕は力を込めて、もう一度目の前のセーターに向かって飛びついた!
 




ガッシャ〜ン…

 吊るしてあった服がみんな落っこちた。

 「あっちゃ〜まいったな〜……でも仕方が無い、お化けがやったことにしておこうっと」 
 僕は後ろをも見ずに、急いで押入れの外に出た。


 ポタッ…


 へんてこりんな音が、また僕の耳に飛び込んで来た。

 僕はカーテンの隙間からそーっと奥を覗いて見た。
…でも、やっぱりだ〜れもいやしない。






 ポタッ…


 「バスルームだ!」

 今度ははっきりと聞こえた。

僕は思わず走り出していた。
洗面台の上に飛び乗って辺りを見渡した。

 「絶対この近くにいるはずだ…」





 1回、2回、3回…僕は狭いバスルームの中を行ったり来たり、上がったり下がったり、
一生懸命になって探したんだ…本当だよ!

それでやっと見つけたんだ、音の正体を、そうさ僕が見つけたんだ!

 ポタッポタッ…て漏れてる水をね

 「きっとこれで明日はうーんと誉めてもらえるぞー」






 僕は嬉しくてなかなか眠れなかった。
明日の朝はブランド物のキャットフードを持ったキャンキャンとボサボサが、
ニコニコ顔で僕の目の前に立ってるんだ……ムニャムニャムニャ…


 
 次の日、僕はキャンキャンとボサボサの話し声で目が覚めた

 「まったく…なんて奴だ! 
夜中にガタガタうるさいと思ったら、洗濯物も、押入れの中も、
おまけにバスルームまで引っくり返しやがって
…しかも水でビショ濡れだ!」


 僕は明るくなったトレーラーの中を見て驚いた。
二人の足の向こうに見える景色はびっくりするほど散らかっていた。

 僕は恐る恐るそーっと二人の顔を見上げた

 「罰として今日は朝ご飯半分…いいな!…分かったなラスティー」

 ボサボサの声がトレーラーの中に響き、僕の全身に突き刺さって来た

 「そっ…そりゃないよ……」僕は泣きそうな小さな声で「ニャ〜〜」と鳴いた。