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ラスティー日記 8

○月×日
ブルブルブルッ…
「う〜〜寒い寒い…」
まだ薄暗いトレーラーの中で、僕は震えながら目を覚ました。
昨日、車の後ろに引っ張って来たへんてこりんな大きな箱が、
今日から僕達の新しい家なんだ。
1週間前に新しい家に引っ越したばかりなのに、今日からはまた別の場所だ。
でも、何だかとっても狭いし、とっても寒いんだ…ほんと、まいちゃうよ…
ギッギギ〜〜〜
嫌な音を響かせてドアが開いた。
突然薄暗い中からボサボサの顔がにゅ〜っと出て来て、
僕は思わず逃げ出しそうになった。
こんなに朝早くから起きてるなんて、
やっぱり、旅は早起きなんだなって僕は思った。
「おっ、ラスティー、もう起きたのか、じゃあー一緒に朝の散歩に行こうか」
ボサボサは僕の返事など聞かずに僕を抱き上げ、
まだ少し寒い森の中へと歩き出した。
チチチチチチチ……
突然けたたましい音が森の中に響きわたった。
僕は怖くなって、急いでボサボサの腕の中に飛び込み、丸くなって隠れたんだ。
「ははははは…」
ボサボサの笑い声が聞こえて、僕はそーっと顔を上げてみた。
森の中はもうシーンとしている。
ボサボサは僕の顔を覗き込んで
「ははは…心配するな、あれはリスの鳴き声だ、
森の中に沢山いるけど、ケンカするんじゃないぞ…」って言った。
僕はもう一度そ−っと辺りを見回した。
危険じゃないことを確認すると、僕は一気にボサボサの肩の上に登り、
見たことも無いその声の主を探したんだ。
「あっ、いたぞ…なんだよ、僕よりずーっとチビじゃないか、驚いて損しちゃったよ」
僕は木の上に向かって大きく勇ましく「ニャ〜〜オ」と鳴いてやった。

しばらくすると、森の中にまた変な音が響いて来た。
今度の相手は何だかとってもおっかなそうだ。
だって、遠くの方からゴーゴー、ゴーゴー言ってるのが響いて来るんだもの。
僕はまた急いでボサボサの腕の中に潜り込んだ。
今度の奴はきっと化け物だ、あんなに大きな声を出せるんだもの、
凄いに決まってる。
そう思うと、怖くって帰りたくって必死になって「ミャ〜〜」って鳴いたけど、
ボサボサの奴また笑うんだ。
「ははは…大丈夫だよ、これは川の流れる音だから、お前を食べたりなんかしないよ…」
そう言いながらボサボサは自分の手を川の中に入れると、
パッパッパッて僕に水をかけたんだ。
もうー冷たいったらなかったさ
心臓が止まりそうで思わずボサボサの腕に噛みついてやったんだ。
散歩から戻ると、トレーラーの中は美味しそうな匂いで溢れていた。
「朝ご飯出来たわよ」
キャンキャンの声が天使に聞こえた。
「そうだ…僕はまだ朝ご飯を食べてないんだった!」
これは僕にとっては一大事さ。
気が付いてしまうと、何だか急におなかも空いてきて、
もうじっとなんかしてられない。

僕はこっそりとカウンターに手を掛けて、
そーっと料理を覗いて見た…
ホットケーキだ!
僕はトレーラーの中を行ったり来たりしながら朝ご飯の催促を始めた。
「早く早く〜おなかすいたよ〜何か食べたいよ〜
死んじゃうよ〜泣いちゃうよ〜齧っちゃうよ〜…」
キャンキャンの足にスリスリしたり、
ボサボサの手をペロペロしたりしてご機嫌を取ることだって
もちろん忘れちゃいなかったさ
なのに…ひどいんだ!
トレーラーの中に充満しているとっても良い匂いと、
僕のお皿の中に用意された朝ご飯とはどう考えたって全く違うんだ!
「こんなの許せるもんか!」
僕は大きな声で叫んでいた。
僕は朝からボサボサを散歩にも連れて行ってやったんだ。
こんなのあるもんか!

二人が食事を始めると、僕はそーっと、そーっとテーブルの下に潜り込み、
そこから静かにキャンキャンの膝の上に登ってみた……
「見つけたぞー…やっぱりだ、僕の朝ご飯とは全然違う!」
くっそーこのままおとなしく引き下がってなんかやるもんか
ふ〜む、どうしょうか…僕は必死に考えた
ここから一気にテーブルに飛び移り、
二人の食べているホットケーキをくわえて逃げる《強行手段》に出るか?
それともキッチンに置かれた予備のホットケーキをこっそりと頂くか?
ふ〜む…僕は漂う匂いに鼻をピクピクさせながら、ボサボサの方をチラッと見た。
「あちゃ…目が合った…」
少し怖い目でボサボサも僕を見ていた
仕方なく僕は予備ケーキ《こっそり頂き作戦》に決めた。
二人はまだテーブルで食事中だ、狙うなら今しかない!

僕は急いでキッチンの方へ回り込むと
そーっとカウンターに手を掛けてその上を丁寧に見渡した
ガ〜〜ン!
もうホットケーキは消えていた
「人間の食事はお前には良くないんだ、
だからキャットフードで我慢しろよ……なっ、ラスティー…」

ボサボサの声が虚しく僕の耳に響いて来た
僕はとっても悲しい気持ちを押さえ、天井を見上げて「ミャ〜〜」と小さく鳴いた。