ラスティー日記 5



○月×日


 「ねーねー遊ぼうよ、ねーってば…」 
 
 朝から僕がず―っと言ってるのに、二人とも今日は全然遊んでくれないんだ。


 キャンキャンは一日中あっちへ行ったりこっちへ行ったり歩き回ってるし、
ボサボサは自分の部屋に閉じこもったきり出てこないしさ、
何かがおかしいんだ、何か隠してる、

絶対何か秘密が有るに違いないんだ!!
 

 僕は一人部屋の隅から「ニャ〜〜ミャ〜〜」って鳴き続けてた。

でも全く効果無しさ……

 「ふんっ、いいさ、それなら僕にだって考えがある、
遊んでくれるまで絶対離れてやらないんだからな……」

 僕はキャンキャンの足元にピッタリとくっついた。
そうさ、どこに行くのも付いて行ってやるんだ。

「そしたらきっと遊んでくれるに違いない」

 …でも、これまた全然だめさ、

次から次にいろんな用事が出て来て、僕の方なんか見向きもしないんだ。





仕方ないからキャンキャンの靴下に噛み付いてみたり、
エプロンのヒモにぶら下がったり、背中によじ登ったりしてみたんだけどさ
全部・・・「ダメッ!」の一言さ。
  
 「まったくいやんなるよ、どうなってんのさ……もしかして僕は嫌われちゃったのかな?」


 そう思うと何だか急に不安になって来た
…だって、僕には思い当たることが沢山有るんだ。

誰にも内緒にしてたんだけど・・・
実は昨日植木の枝を折ったのは僕なんだ…
それにおととい大事なノートを破いたのも僕だし…
今朝トイレの砂をひっくり返して来たのももちろん僕なんだ……

いやいやまだまだ他にも沢山有るぞ、考え出すときりが無い。

僕は益々不安になって来た。

 
 僕はそれから少し考え、作戦を変更することにした。

 付いて回るだけだからダメなんだ!

キャンキャンの用事を何か手伝って、そのご褒美にまた可愛がってもらおう。
 
名付けて「良い子、良い子作戦」さ!

 
 しばらくするとキッチンからガタゴト音が聞こえて来た。
僕はそーっと近づき冷蔵庫の陰から様子を伺った。


 


キャンキャンは忙しそうに沢山の荷物を箱の中に詰め込んでいた。

 「チャンスだ、作戦開始!」

 僕はそう思って、急いでキャンキャンの周りを走しり始めた。

 「ん?…なに、どうしたの…手伝いに来てくれたの?…そう、偉いわねー」
 キャンキャンがニコッと笑って僕の頭を撫でてくれた。
 
「やったー作戦大成功だー」

 僕は嬉しくなって、もう2回キャンキャンの周りを、回って見せた……
 
 …やり過ぎだった…
  




 気が付いた時、僕は詰め込む荷物をグチャグチャに踏んづけていた。
 
キャンキャンの目が一瞬キッとこちらを見て、僕はドキッとした。
 
怒ってる!?

「手伝ってもう一度誉めてもらわなきゃ」
そう思った僕は慌てて足元に有った袋をくわえたんだ…ガブッてね。
そしたら、また怒られちゃった。
 「ラスティー、噛んじゃダメよ!」

  
 僕はちょっといじけて、ちょっと悲しくて、部屋の一番隅に小さく丸まって、
遠くからキャンキャンを見てたんだ。
 
「もう手伝ってなんかやるもんか、頼まれたって嫌なこった……絶対の絶対だ!」

 僕はそう決めた。

 
 でも、その後直ぐに、今度はキャンキャンが棚からいっぱいに服を引っ張り出して来て、
辺り一面に広げ出したんだ。

 「やったー」

 僕は嬉しくて思わず叫びながら走り出していた。

……ん?…なぜって?

だって、そこら中にシャツやパンツが散らかしてあるんだもん。
やっと遊んでくれるんだ!
そう思ってシャツの上を思いきり転げ回ったんだ。
散らかしっこだったら僕だって負けちゃあいない。
 
積み上げられた靴下をソファーの下に隠したり、
シャツの中に潜り込んで黄ばんだわきの下に噛みついたり
……楽しいったらなかったさ……
 
 ふっ…と気が付くと、僕はキャンキャンと同じ背の高さになっていた。
いや、持ち上げられていたんだ。
 
キャンキャンはとっ〜ても怖〜い顔をして

「今せっかく並べたところなのに……ふ〜っ…まったくもー」

・・・って大きくため息をついた。
 
僕は黙って下を向いていた。

 「そんなに怒らなくったっていいじゃないか、遊んでくれないから悪いんだ」
 
キャンキャンが僕の顔をもう一度覗き込んで言った。

 「いい…ラスティー、これは旅の準備をしてるんだからね…邪魔しちゃだめよ」

 「旅?・・・の準備?」

 僕には良く分からなかった
…ただ、その時のキャンキャンの顔がおっかないのだけは確かだった。
 

 
   

 その夜、キャンキャンは僕を膝の上に乗せてお話をしてくれた。
 なんだか知らない、見た事も無い綺麗な写真を沢山持って来て、
僕に見せながらこんなことを言うんだ…

 「どう…凄いでしょう?とっても綺麗でしょう?
旅に出ればね、こんな素敵な場所に沢山いけるのよ…面白そうでしょう?」
 
でも、急にそんなこと言われても、直ぐには分かんないさ、
だから僕はもう一度ゆっくりとその旅とか言う奴の写真を眺めたんだ…ジーッとね。
  




あんまり美味しそうには見えないけど、僕はほんの少しだけ旅に興味が沸いて来て、
ほんの少しだけ眠くなって来て
、あくび交じりに「ニャ〜〜〜アァ〜〜」とだけ答えておいたんだ。