ラスティー日記 

 


○月×日

 暖かい朝の日差しが広がる中、僕は
「う〜〜ん…」と、大きく伸びをしてから、辺りを見渡した。

 …でも、
おじさんやおばさんの姿は、どこにも見当たらない。

 「そうだ、二人組みに新しい家に連れて来られたのは、やっぱり夢じゃなかったんだ」

 寝ぼけていた頭が、だんだんはっきりとして来た。

昨日のことを思い出すと、僕はまた少し怖くなってきた。

 ボサボサもキャンキャンも、僕をいじめたりはしなかったけど
でも直ぐに信用なんて出来やしない。

朝起きて来たら二人とも、とってもおっかない顔に変わってるかもしれないし……

 「とにかく、どこかに隠れなきゃ!」
  
 僕は辺りを素早く見渡し、テーブルの下にあった小さなカゴの中に飛び込んだ。
 カゴは僕が入るのにちょうどピッタリのサイズだった。

「よし、ここなら大丈夫だ、もう捕まらないぞ」






 パタパタパタ… 
 しばらくして、どこからか足音が響いて来た…キャンキャンだ。

 僕は体を丸め、出来るだけ頭を低くし、
見つからないように小さくなって、耳だけをピンッと立てていた。
 
 どれくらいたったんだろう、足音が消え、部屋の中がシーンと静かになった。
 
「もう大丈夫だ、見つからなかったんだ…」
 僕はそう思い、静かにそーっと顔を上げてみた。
 
「ギャ〜〜〜〜」

 驚いたー…そりゃー驚いたさ、
だって直ぐ目の前にキャンキャンの顔があったんだもん。
僕は慌ててもう一度下を向いて小さくなったが、もう遅かった。

 キャンキャンが静かに僕を抱き上げ、顔を覗き込んだ…
僕もそーっとキャンキャンの顔を見た。
 「ふーっ…」 
 僕はひとつため息をつき、少しだけホッとした
どうやらおっかない顔には変わってないみたいだ。

 でも、まだボサボサがいるんだ、まだまだ安心なんか出来るもんか!
 

 僕はすきを見て今度はイスの下に潜り込んだ。

とっても狭くって、とっても暗くって、とっても窮屈だけど…
でもここならきっと安全だ。

 
 少しホッとしたら、僕はまた眠たくなって来た。
狭い狭いイスの下で、僕は小さく丸くなって、また夢の続きを楽しんだんだ。

 
 「ネ、ネズミだ〜〜〜」

 びっくりした−…どれくらい眠ってたんだろう、
目が覚めた僕の目の前に、突然ネズミが降って来た……それも3匹も!

 もう、じっとなんかしてられない。
 
 僕はイスの下の狭い隙間から少しづつ這い出して行った。
 そりゃあ少しは思ったさ…「おかしい」ってね。
 シッポの先にひもがついてたりするんだもん

……でも…3匹だよ、3匹!

我慢なんか出来るもんか!
 
 僕はゴクッて唾を飲み込んで、右手の爪をチラッと見た。
 「よっし…準備はOKだ!」
 エイッ…
 僕の右手の爪が見事ネズミに……あれっ?

届かない?

 クッソーもう一度、ヤ−ッ…あれ、あれ?まただ…


 


 このネズミの奴おかしいいんだ、
僕が思い切り手を伸ばして捕まえようとしても、ヒョイッて向こうに逃げちゃうんだ。
 もう一回…もう一回って思っても、
どんどん、どんどん遠くへ行っちゃうんだ。
追いかけても、追いかけても全然捕まんない。

一体どうなってんのさ……まったく。


 ネズミの向こうにいつもキャンキャンの足が見えるのは少し気になったけど、
僕にだって猫のプライドってものが有るんだ、
諦めたりなんかするもんか!


 僕は夢中になって追いかけた…
そうさ、追いかけて、追いかけて、追いかけ続けたんだ。
 そしてついに…

ガブッ

 「やった−捕まえたぞ…」
 僕は自慢げに辺りを見渡した。
 「あれっ?」
 いつの間にか僕はイスの下から飛び出し、もう家の中を3周ほど回っていた。

 別に何にも怖い物も無かったし、新しい家もなかなかいいかな…なんて、
ほんの少しだけ安心した。


 しばらくすると僕の目の前にまたネズミがポトンッと降って来た。
その向こうには、キャンキャンがシッポをもってユラユラ揺らしているのが見えていた。





 僕はキャンキャンに向かって大きな声で「ミャ〜〜〜ォ」って言ってやった。