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ラスティー日記 1

○月×日
窓辺の特等席で、いつものようにのんびりと昼寝をしていた僕の耳が、突然…
ピクッ
…と動いた。
「ん?…何だ?…」
急に家の中が騒がしくなって来た。
トントントントントン…
階段を昇る足音が響き、
見たことの無い二人組みが、僕の目の前に現れたんだ。
一人はボサボサ頭のノッポの男の人、
もう一人はキャンキャン響く大きな声の女の人だった。
僕は一瞬ドキッとした
…だって、お世辞にも上品そうには見えやしないんだもの、その二人組みは……
でも、その直ぐ後ろから、いつものおじさんとおばさんの優しい顔が見えたので僕は少しホッとした。
「なんだ、ただのお客さんか」
…そう思ったんだ
でも違ってた
優しかったおじさんとおばさんが、今日は全く笑わない。
淋しそうな顔をしながら、交互に僕をゆっくりと抱き上げ、
頭を一度づつそっと撫でてから、短くチュッとキスをしてくれた。
「なんだかおかしい?…何かが変だぞ…」
僕はおばさんに向かって「ミャ〜オ」と鳴いてみた
…でもおばさんは、わずかに微笑んだだけで返事をしてはくれなかった。
「やっぱり変だ!…」
でもそう思った時、僕はもうキャンキャンの腕の中に抱かれていた。

キィ〜〜〜バタン!
ブゥォ〜〜
へんてこりんな音を響かせ、砂煙を巻き上げてボサボサの運転する車が走り出した。
「なっ何だ、何が始まるんだ…」
車に乗せられた僕は、何が何だか分からないでいた。
キョロキョロ回りを探してみたが、おじさんもおばさんももういない、
僕はこれから一体どうなっちゃうんだ……
僕は生まれてから、あの家の外へ出るのも初めてだった。
見慣れた畑が、どんどん後向きに飛ばされて行った。
毎日小さな窓から見ていた景色と、車の窓から見える景色は、なぜかどこか違う気がした。

ボサボサが時々振り返り、僕の頭を撫でようとして、その度に車が大きく右に揺れた。
「まったく危ないったらありゃしない、ちゃんと前を見て運転しろってんだよ」
僕には二人のことと同時に、初めて乗った車も少し怖かった。
キャンキャンは僕の事を不思議そうな目でジーッと見てから、
何だかとても怖そうに僕を抱きかかえようとした。
…でも、僕だって怖いから、
思いきり大きな声で「フゥーッ」て叫んでやったら、びっくりして手を引っ込めちゃった。
何だか良く分からない……でも、きっと僕は誘拐されたんだ、
僕がとっても可愛いくて、頭も良さそうだから、きっとどこかに連れて行かれちゃうんだ。
そう思うと僕は何だか急に悲しくなって、
車のシートの下に潜り込んだ。それも一番奥の一番狭い所へさ…
「ここなら絶対に捕まらない、二人のすきを見て必ず逃げ出してやるんだ!」
僕は背中を丸めて身構えていた。
もし今度キャンキャンの腕が伸びてきたら・・・
その時はガブッて思い切り噛み付いてやるんだ。
手加減なんかしてやるもんか、そうさ僕は戦うんだ!
僕だってやるときはやるんだ。
そう心に決めた……
でも……
いつのまにか、僕はまた寝ていた。
僕が気がついたときには、またもやキャンキャンの腕の中だった。

辺りには見たことの無い町、見たことの無い森、それに見たことの無い家があった。
車を止めると、ボサボサが近づいて来た。
僕は眠い目を一生懸命パッチリと開けて、ボサボサの顔を睨みつけてやった…
「来るなら来いっ…」
でも、ボサボサは軽く笑いながら僕の頭を撫でてこう言ったんだ。
「さあー今日からここがおまえの新しい家だぞ」って…
えっ?…どういことだ?
僕にはまだ良く分からなかった。
「さぁ今日から私達があなたの新しい家族よ…」
今度は、耳元でキャンキャンの声が優しく響いた。
新しい家?…新しい家族?…
そんなこと急に言われたって…急に言われたって……
僕だって困るよ。
素直に「はい、そうですか」なんて言えるもんか!
ボサボサがもう一度僕の頭を撫でながら、ゆっくりと顔をのぞき込んだ。

僕はとりあえず小さな声で
「ミャ〜ォ」とだけ言っておくことにした。