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晴れ時々曇りのち雨、所により雪か雹?
掲載の全ての写真と文章の著作権は、作者藤江幸宏が保有しております。無断での転載・引用は法律で禁じられております。
下記の原稿は、2001年モーターマガジン社・月刊カメラマン誌に連載された《カナダ写真生活日記》の内容に、
加筆・訂正を加えてレイアウトし直した物です。

「しっかしほんとによく変わる天気だな〜」
僕は恨めしそうに空を見上げ、そう呟いていた。
つい先程まで眩しいほどに輝いていた太陽は、もう完全に姿を消し、
今は低く垂れ込めた黒雲が空一面を覆っている。
美しく続いていた山並はすっかり霞んでしまい、
今はもうどこに在るのかさえ、ほとんど分からなくなっていた。
「山の天気は変わりやすい」
・・・とはよく言うが、カナダ西部からロッキーにかけての山岳地帯の天気も、
実によくコロコロと変化する。
わずかに谷を一つ渡っただけ、山を一つ越えただけでも、
そこには全く違う天気が顔を出す。
例えば、キャンプをしていたある一日の天気は、こんな具合だった・・・
明け方の濃霧に始まり・・・
いきなりの雪、曇、晴、雨、また曇、晴、突然雨と雹そして雷、その後また晴・・・
これじゃ、日記の中の天気を書き込む欄には、とても書ききれるものじゃない。
変化があって面白いと言えばそれまでだが、
この変化の中を移動しながら撮影するとなると、話は別だ。
まずこういう場所で撮影をする場合、選択する方法が二通りある。
一つは気に入った場所で天候の回復するのをひたすら待つ方法。
もう一つは条件の良い場所を探し、移動しながら撮影する方法。
この日の天気予報は「晴時々曇り所により雨か雪・・・」
こんな必ずどれかは当りそうな天気予報なら、僕にだって出来る!
しかたなく、今日は二つ目の方法にする事にした。
山と谷の複雑に入組んだ地形、南北に延びる観戦道路・・・そして、当てにならないごちゃ混ぜ予報。
こういう時は、ただじっと待つよりも車を走らせて、状況の良い場所を探す方が効率が良い。
僕はカナディアンロッキーのジャスパー〜バンフ間を南北に走るアイスフィールドパークウェー93号線を移動しながら、
その日の撮影地を探すことにした。
だが、行けども行けども状況は良くならない。
長年撮影をしていると、はっきりと運の良い日と悪い日があるが、
この日はなぜか僕の上に黒雲が張り付いて離れようとしなかった。
わずかに雲の切れ間から光が射し込み、急いで三脚をセットすると、
直ぐまた黒雲に覆われ突然の雨になる。
待機しても、移動してもその繰り返しだった。
雨の日も、曇りの日も、立派な被写体には違いないが・・・
やはり、そればかりでは、話しにならない。
自然とケンカをしても、勝ち目は無い。
僕は撮影を諦め、車の中から、流れる雲をただぼんやりと眺めていた。
わずかに開けた窓の隙間から、時折生温かい湿った風が入り込み、
僕はいつの間にか眠っていた。
どれくらい眠ったんだろう。
吹き込む風が急に冷たく感じ、僕は震えながら目を覚ました。
そして目の前に、さっきまで僕が文句を言っていたコロコロ変わる天気が作った美しい風景が広がっている事に気が付いた。
隠れていた残雪の山が顔を出し、その向こうから強風に乗って雲が飛ばされて来る。
時折風が止むと、その風景が綺麗に湖面に映り込んでいた。
「もし、ずっと見え続けていたら、こんなにもワクワクする事は無かっただろう」
僕はコロコロ変わる天気に少し感謝しながら、素早くシャッターを押し続けていた。