いざカナダへ!




《 その6 常夏の島カナダ? 》



「どこまで走らせるんだ〜!」

僕達を含めて五〜六名の客が、息をはあはあ言いながら、凄い形相で走っている。

特に僕は大きなカメラバックを両肩に掛けているのでかなりきつい。
 
走りながら、ちらっと横目に、運行表示用の掲示板が飛び込んで来た。
そこには、ソウル発バンクーバー行きは予定より数分遅れただけで、
既に出発済みになっている。
 
「どういうことだ?」

 僕達が乗り込めば直ぐに出発するという事なんだろうか…
ますます訳が分からないまま、僕達はあるゲートに辿り着いた。

地上職員から搭乗スチュワーデスに何か早口で言葉が交わされ、
僕達は立ち止まる事も許されずに、そのまま機内へと吸い込まれて行った。

そして飛行機は直ぐに動き始めた。


機内はほぼ満席に近く、既に座っている乗客達の視線がチクチク突き刺さって来る。
「何もたもたしてやがんだ!」
「お前達のせいで、離陸が遅れてるじゃねーか!」
口には出さなくても、しっかり目がそう語っていた。

なんだか分からない異様な雰囲気を感じつつ・・・

カシャッ

・・・と、シートベルトを締めると、
暗くなり始めた窓の外の景色は、直ぐに勢い良く後方へと飛ばされて行った。



 まるでサスペンス映画のワンシーンのようだが、
僕達がこの飛行機の行き先を・・・


「ハワイ・ホノルル!!」


・・・と知ったのは、それから数分経った、日本海上空での事だった。




 「オーバーブッキングだ!」

 そう気付いても、もうどうにもならなかった。

さっき見た掲示板の意味もはっきりとした。

要するに、座席数以上に予約を取り過ぎてしまい、それがばれないように密室に隔離し、
どこでもいいから空いている飛行機に乗せてしまい、
後の処理は他の空港で何とかさせる…
信じられないような話だが、これは紛れも無い事実だし、
恐ろしい事に海外ではよくある事らしい。


 不景気の中でも高い人気をほこる格安チケット。
このチケットを扱う会社は数多いが、その反面様々なトラブルも起きている。
格安チケットの多くは、出発当日空港渡しというケースもあり、
当日空港へ行くとその会社が無くなっていたり、
座席が足りなかったりという事も多々起きている。

ツアー旅行と違い、個人での旅行は、何か起きた時の処理を全て自分でしなければいけない。
これから海外へ一人で出て行こうと計画中の方は、
不明な点など、お金を払う前に、よく確認をとっておきたい。



グォーというジェットエンジンの音が、不思議と耳に心地良く
ぼんやりと窓の外を眺めて見る。

もう既に日はほとんど暮れているが、まだ薄っすらと海が見える。

 そう、窓の外には寒々とした北の海、ベーリング海…

・・・ではなく

赤道直下の太平洋が、どこまでも広がっていた。


乗った瞬間、異様な雰囲気を感じたのは、冷たい視線の事だけではなかった・・・

服装が明らかに違うのだ!


 ハワイへ向う機内には、当然Tシャツに半パンツといった軽装の人達が目立つ。
ガイドブック等を片手に、楽しそうに語らう人達に囲まれて、
カナダでのキャンプを想定した、暑苦しい姿の僕達がいた。



 飛行機を降りた僕達に、強烈な日差しが容赦無く降り注ぐ。
ここはカナダとは全く逆に位置する常夏の島、
ハワイ・ホノルル国際空港。

 他の客は皆楽しそうに出口へと向かうが、僕達の顔はかなり引きつっていた。


 
「問題無い、問題無い…直ぐに次の飛行機が有るから、
それに乗ればいい…問題無い」

日に焼けた肌に白い歯がやけに目立つ爽やかそうな職員。
彼が、そう言って手渡してくれたチケットには
・・・

「ロサンゼルス」

・・・と書かれていた。


 「ちょっ、ちょっと、これロサンゼルスって書いてあるじゃないか、
僕達の行きたいのはバンクーバー、カナダのバンクーバーだよ」

しかし、いくら怒鳴ってみたところで、この人達にとっては、
さほど珍しくも無い日常の出来事のようで
「それがどうした、うるさい奴だな」
くらいにしか感じてはいないらしい。

 結局、ここではそのチケットしかないと言われ、僕達は渋々ロサンゼルスへと向かった。
 

ロサンゼルス国際空港では、飛行機を降りると同時に、
既に空港職員が僕達を待っていた。

 「早く…直ぐに走って…早く…」
 
どうして僕達が怒鳴られるのか…そんな事を言ってる暇も無い。

おまけにソウルの空港と違い、ロサンゼルスの空港は、
港内をシャトルバスが巡回するほどばかでかい。
照り付けるロサンゼルスの日差しは、キラキラと腹が立つほど眩しく、
カナダ用に着込んだ服装の下には、既にじっとりと汗が噴いていた。


 ロサンゼルスで僕達が飛び込んだ飛行機は、
予想通り
またもバンクーバーへは向かわなかった。

 「当機はこれよりサンフランシスコ国際空港に向けて……」

 ここまで来ると、さすがに僕達も怒りを通り越し、呆れ、
そして次に何が起きるのか、楽しみにさえ思えて来た。

 「よっし、これでまた一歩カナダに近付いたな…
いっその事、このままヨーロッパまで行くのも面白いかもな…」

 「同じ料金で、いっぱい乗って、いっぱい機内食を食べれるんなら、まあ良いけどね…」
 
…などと、既に開き直っていた。
 
海外で生きて行く為に必要な物は、お金でも、語学力でもない。
まずは適応力、図太い神経、そしてプラス思考だと、
僕はその時そう実感した。
 


 話が大きく逸れてしまったが・・・

96年・移住の年の僕達は、
予定通り21時間という通常の倍以上の時間をかけて、
バンクーバー国際空港に無事辿り着いた・・・

・・・のだが




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無事にカナダに到着!だが、またまたここで問題が・・・
先が気になるー・・・方は

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