![]()
![]()
アカリスのいたずら
長く厳しい冬を前に、アカリスの冬支度が始まった……

キャンプ場に住みついた1匹のアカリス
彼がベットの素材に選んだ物は…
随分冷たくなった風が、木の葉と一緒に吹き抜けて行き、
ロッキーに短い秋が訪れる頃、
キャンプ場周辺が、急に賑やかになりだした。
…と言っても、もちろんこれは人間の話では無い。
山頂付近に雪が降り始めるこの時期、
食料を求めて多くの動物達が、麓のキャンプ場にやって来るのだ。
春までぐっすりと眠る為、冬眠前にたっぷりと脂肪を付けておきたい熊。
交尾期を迎え彼女探しに忙しい大角鹿。
人のいなくなったキャンプ場を我が物顔で歩くコヨーテ。
そして今、僕の目の前には・・・
忙しそうに冬の準備をする一匹のアカリスの姿があった。
彼と僕とは、もう一週間の付き合いになる。
同じキャンプ場を拠点にして撮影を続けていた僕が、撮影から自分のサイトに戻ると、
どこからともなく彼が現れて出迎えてくれるのだ。
まあ、彼にしてみれば単に物珍しいだけかも知れないし、
警戒して監視しているのかも知れないが、
彼の人懐っこい仕草や表情が、疲れて帰って来た僕を、ホッとさせてくれたのは事実だった。

ある日、僕がキャンプ場に戻ると・・・
彼はいつもと同じ木の枝の上で、
いつもと同じように松ぼっくりをほおばりながら、
いつもと同じようにこちらの様子をじっと観察していた。
僕もいつもと同じように「ヒュィ…」と短く口笛を吹いて彼に挨拶をした。
…だが、
いつもと違っていたのはこの後だった。
彼はスルスルスルッと木を降りると、突然隣のキャンプサイト目掛けて走り出した。
安全な木の上から食料になりそうな物を見つけておいて、
急いでそれを拾いに行く…それは普段よく目にする光景だが、
彼が見つけたのは、どうも食料では無いらしい。
彼は二度、三度と隣のサイト内を行ったり来たりした後、
そこに吊ってあった洗濯物目掛けて飛び移り、全身を使って上下左右に揺さぶり始めたのだ。
しかもシャツやタオルなどいろいろ吊ってある中から、
彼が選んだのは一番暖かそうな毛織のソックスだ。
…そう、彼が探していたのは食料ではなくて、冬用の暖かいベッドだったのだ。


急いでカメラをセットした僕は
「うーん…奴には洗濯眼…いや違った、選択眼があるな…」
・・・などとつまらぬ事を呟きながら、しばらく彼の様子を覗っていた。
彼は自分の倍ほどもある毛織のソックスを、重そうに、そして大事そうに、
少しずつ少しずつ自分の巣穴へと向かって運び始めた。
僕の事が気になるのだろうか、時折立ち止まり、
こちらをチラッと見てから、また歩くという事を何度も繰り返す。
まるで「頼むから、もう少し向うへ行くまで黙っててくれよ…なっ…」とでも言っているような、
その憎めない何とも愛嬌の有る仕草に、
僕は隣のキャンパーには悪いが、彼の事を内緒にしておく事に決めた。

動物物語トップページに戻られる方はこちらからどうぞ。